LOGIN学生時代からの恋人である、守里 流(ながれ)から突然の婚約破棄!? その理由は彼の会社の御曹司、神楽 朝陽(あさひ)という男の所為だと聞かされた鈴凪(すずな)。 あっさり恋人に捨てられてしまう鈴凪。 怒りにまかせて、婚約破棄の原因である神楽 朝陽に会いに行くが…… 「元カレに復讐するつもりなら……いっそ、世界一の愛され花嫁になってみないか?」 追い詰められた鈴凪に、謎の提案を持ちかける神楽。 どうやら彼も、なにやら訳ありのようで――? 眼鏡を外すとドSに変貌する御曹司、神楽 朝陽 × 明るさと前向きな姿勢が取り柄の雨宮 鈴凪 元カレの流に復讐するため、鈴凪は朝陽の愛され花嫁になりきるはずだったのだがーー? 表紙絵AI学習禁止
View More「俺は先に中に入って父さん達に伝えてくる、心の準備が出来てから二人は来ればいい」「えっ……ありがとう、お兄ちゃん!」 自宅に着くとすぐ両親に挨拶するのかと思っていたが、兄が気を利かせてくれたので少しだけ気持ちを落ち着ける時間が取れた。朝陽《あさひ》さんも兄が迎えに来たことで緊張していたのか、今はホッとしている様にも見えて。 まあ、これからが本番なのでなおさら気を引き締めなくてはいけないのだけど。あまり待たせるわけにもいかないので、もう一度だけ大きく深呼吸をすると気合を入れて玄関のドアを開けた。「おかえり鈴凪《すずな》、あんまり遅いから何度こっちからドアを開けようと思ったか」 どうやら待ちきれなくて扉の前でソワソワと待っていたらしい、母らしいと言えばそうなのだけど。かと思えば父の姿は全く見えないので、きっと奥の部屋で兄と待機しているのだろう。そう考えると余計に緊張してくるが、まず母に朝陽さんを紹介しなくては。「もう、そういうとこ変わらないんだから。でね……この人が電話でも話した私の恋人の神楽《かぐら》さんよ、ちょっと信じられないかも知れないけれど」「神楽 朝陽です。この度は突然の結婚報告と挨拶になりましたが、どうぞよろしくお願いします」 少し背の低い母に目線を合わせてから丁寧な礼をして、もう一度しっかり顔を合わせて柔らかく微笑んでみせる。緊張なんて欠片も感じさせない挨拶をする彼は、やっぱりこういう場面にこそ強いのだろう。「まあ、本当にイケメンなのね! 鈴凪から聞いてはいたけど正直なところ半信半疑だったのよ、しかも仕事も出来て優しいスパダリなんだって冗談だと思うでしょう?」 あの時の電話でそこまで言ったかな? と思ったが、ここでその発言を否定すれば後々面倒な事になりかねないので黙っていると。ジトっとした目で朝陽さんに見られて、ちょっと焦る。「お前さぁ、こういう時にハードルをバカ高くしてどうするんだよ?」「……嘘はついてませんよ、朝陽さんはイケメンで有能なんですから」 ハードルを上げるとかそんなつもりはなかったんですけどね、電話でも本当のことしか話していなかったし。そもそも朝陽さんが私には勿体無いほどの素敵な男性だってことは、誰が見てもすぐに分かることだから。
「……結構緊張するもんだな、結婚の挨拶ってのは。仕事柄、プレッシャーには強い方だと思っていたんだが」「仕事と両親との顔合わせは全然違うと思いますけど、まあそれも朝陽《あさひ》さんらしい考え方ですよね」 冗談じゃなく朝陽さんはかなり緊張しているようで、私の揶揄いにもいつものような反撃する余裕がないらしい。私の父は彼のお父さんのような厳格な人ではないし、母もかなりマイペースなのでいつも通りの朝陽さんで大丈夫だと思うのだけど。 でもそうやって緊張するほど真剣に、私の両親と向き合おうとしてくれてるのは嬉しい。 最寄りの駅まで着いて実家までは徒歩数分の距離だから、このまま二人で家まで歩いて行こうとすると何処からか私の名前を呼ぶ声がする。しかもその声には、とっても聞き覚えがあって……「鈴凪《すずな》! 鈴凪、俺だよ! ……ああ、良かった。迎えに来たのに、すれ違ったらどうしようかと」「え、お兄ちゃん? わざわざ迎えに来たの、家はすぐそこだっていうのに」 まさかこの人が駅に迎えに来るなんて思っていなくて、急な兄の登場に朝陽さんも戸惑っているかもしれない。そう思って隣に立つ彼を見上げると……「鈴凪さんのお兄さんですか? 初めまして、私は彼女と真剣にお付き合いをさせて頂いている神楽《かぐら》 朝陽といいます」「……ああ、初めまして。俺は鈴凪の兄、雨宮《あまみや》 響《ひびき》だ。親父たちも待ってる、家まで案内するからついて来てくれ」 さっきまで緊張しているとか言ってたはずなのに、爽やかな笑みを浮かべて挨拶をする朝陽さんはさすがだと思う。きっと女性ならイチコロの極上の笑みに胡散臭そうな視線を向けた兄は、名前だけの自己紹介をしてさっさと歩き出してしまった。 昔から兄は私には甘くて過保護だったから、すぐに歓迎してくれるとは思ってなかったけれど。思い出してみれば流との婚約が決まった時も、兄だけは最後まで納得してない顔をしてたっけ?「大丈夫ですよ、兄は私が男性を連れてくるといつも不機嫌になりますから」「……そうなのか?」 それが恋人ならともかく学生時代の友人でさえ、家につれて来ればあからさまに警戒していた暮らしなのだから。今日は結婚したい相手を連れてくると話していたから、朝陽さんには申し訳ないけれど兄のこの反応も仕方ないと思えた。 すぐに実家の玄関が見え、朝陽さん
「……あれ、おかしいな? 朝陽《あさひ》さん、さっきまでそこにいたはずなのに」 私の実家に挨拶に行く準備も出来たし、そろそろ駅に向かうためにマンションを出なくてはと思ったが肝心の朝陽さんの姿が見えなくなっている。確かに数分前までは、そこのソファーに座って書類の束と睨めっこしていたのだけど。 新幹線の出発時間ギリギリになるのは困るので、朝陽さんを探しにうろうろしていると彼の部屋から話し声が聞こえてきて。「ああ……そうだ、今日の……全部、お前たちに任せるから……いいか、しっかり頼んだぞ」「……あの、朝陽さん? そろそろ家を出ないと、予約した新幹線に間に合わなくなっちゃいますよ?」 盗み聞きするのも申し訳ないと思い、扉をノックしてそのまま声をかける。最近は部屋の中まで入ることが増えたけれど、今回は通話の邪魔にならないようドアは開けなかった。「ああ、そうだな。すぐに行くからタクシーを呼んで玄関で待っててくれるか?」「分かりました、そうしますね」 何かあったのだろうか、多分さっきの雰囲気から大事な話だった気がして。でも朝陽さんは私には聞かれたくなさそうだったから、すぐに部屋から離れたのだけど。 休日とはいえ朝陽さんに仕事のことなどで着信がある事は珍しくない、彼の立場上それは仕方のない事だから。でも今日に限って……という気持ちもあって何も言えなかったけど、彼は無理をしてないかと心配になる。 こういう時、自分が朝陽さんの力になったり手助け出来る事があまり無いので凄くもどかしいの。「すまない、少し待たせたな! とりあえず、急いで駅に向かおう」 数分してから朝陽さんがちょっと慌てたように玄関へとやって来たけど、何となく浮かない表情をしてる様に感じて。だから余計なお世話だと分かっているのに、つい聞いてしまったのだ。「あの、さっきの電話はもう大丈夫なんですか?」「ああ、それはもう全部部下に任せてる。今日は俺たちにとって大事な日だから、鈴凪《すずな》はそのことだけ考えていてくれればいい」 朝陽さんの仕事に私が口出しをする事は出来ないから、そう言われてしまうとこれ以上は何も聞けなくて。もちろん彼が信用している人達なのだから、きっと大丈夫なのでしょうけど。 その後の新幹線での移動中は朝陽さんはいつもと変わらない様子で、どうやら私の杞憂だったのかもしれない。それ
『その相手は、そっちで出会った人なのか? 流《ながれ》君ではないのなら、私たちとは面識のない男性なんだろう?』 驚いて言葉の出なくなった母の代わりに、今度は父が電話越しに質問をしてきて。きっと今のお母さんよりは冷静なのだろうけれど、いつもより父の声が上擦っているのが分かる。 こんな急な話を直ぐに信じろと言っても無理があるし、二人が戸惑ったり疑ってしまうのも仕方のないことで。でもお互いの家族にちゃんと話して結婚を認められたい、朝陽《あさひ》さんはそう言ってくれたし私も同じ気持ちだから。「うん、その人には流から一方的に婚約破棄された時からお世話になっていて。想い合えたのも、つい最近の事なんだけれど……」『なぜそんなに結婚を急ぐ必要がある? 鈴凪《すずな》はまだ若いんだから、もっとお互いの事を理解し合うため時間をかけるべきだと私たちは思うんだが』 お父さんはこの結婚に反対するつもりでそう言ってるのではないと分かってる、ただ私の事を心配してくれているだけで。婚約破棄されて間も無い私が焦って、誰でも良いから結婚しようとしてるのでは無いかと考えたのかもしれない。 もちろん私はそんなつもりはないし、朝陽さんが相手だからこそプロポーズに応える気になったのだけど。それがこの電話越しの私の言葉では、ちゃんと両親に伝わらないのがもどかしい。『そうよ、お母さんもお父さんに賛成だわ。付き合ったばかりで鈴凪もその男性も、お互いの悪い部分が見えてないだけかも知れないでしょう? だから、もう少し……』 母も父と同じ様な考えらしく、私の結婚について先延ばしにしたいようで。でも結婚式の日付も決まっていて式場も手配済みなのだから、はい分かりましたと引き下がれない。 それに私自身が朝陽さんの言っていた彼の【愛され花嫁】に、早くなりたい気持ちでいっぱいなんだもの。だから、つい……「我儘を言ってるのは分かってるわ、でも私は彼との未来しか考えられないの! 出会ってからの時間なんて関係ない、そう思えるくらい朝陽さんしか見えないんだから」 こんな風に強く自分の意見を言う事は珍しかった。私はわりとはっきりとした性格ではあるけれど、何だかんだで周りに合わせる方がおおかったし。両親から言われたことも、素直に聞く方だったので驚かせてしまったかも知れない。 そう考えて申しわかない気持ちになっ